Wasting Life / All Ends

日本盤が出たようなので、今更ながら紹介しておきます。女性ツイン・ヴォーカルをfeatureしたスウェーデンのヘヴィ・ロック・バンドAll Endsの1stアルバム。昨年デビューEPの『Wasting Life』が少しその筋で話題になりました。今回はセルフタイトル。


オール・エンズ

オール・エンズ


数年前にEVANESCENCEがUSでブレイクした頃、彼女らがヴォーカルの外見から「ゴシック」「ゴス」と連呼され(別に彼女たちの音楽がゴシックとして支持されたわけではない)、その結果として音楽的にはおよそ見当違いなゴスメタルっぽいお姉ちゃんが次々と「EVANESCENCEふう」というキャッチフレーズを冠されては市場に送り出され、誰も成果を収められなかった時期がありました。
当時僕はそれを眺めながら「バカだなあ、ゴシックじゃなくてIN FLAMESみたいなメロディック・デスメタルっぽい音楽に女性ヴォーカルのせればもっとEVANESCENCEっぽくなって(というか、"Bring Me To Life"っぽく)売れるのに」「誰かJesper Stromlad(イエスパー・ストロムブラード:北欧メロデスの雄、IN FLAMESのGuitarにしてソングライター)に曲頼まねえかな」などとブログで呟いていたわけですが、まさか本当にイエスパーが曲書いてる女性ツイン・ヴォーカルのバンドが出てくるとは。しかも女性ヴォーカルの片割れはEmma Gelotte(エマ・イエロッテ:綴りだけ見ると「ゲロって」に見えるがイエロッテ)って、お前Bjorn Gelotte(ビョーン・イエロッテ:イエスパーの相方、IN FLAMESのGuitar)の妹じゃねえか。
IN FLAMESのGuitarが曲を書いて、IN FLAMESのもう一人のGuitarの妹がそれを歌う、という究極のIN FLAMESゲティスバーグ演説。なんでも元々はイエスパーとビョーンがIN FLAMESと掛け持ちで在籍してたらしい。お前らどんだけ妹好きなんだ。そりゃあ売れますよ。メロデス業界じゃこの組み合わせはソングライティング保証としてはABBAみたいなもんだ。あ、ABBAスウェーデンで男女のグループでしたね。実際の音楽性は全く違いますけど。
アルバムはまだデビュー盤ということもあって、かなりポップに感じられる楽曲とIN FLAMESを女性ヴォーカルに替えただけといった趣の比較的ヘヴィな楽曲が混在している印象ですが、デス声を抜けば極めて正統派なヘヴィ・メタル然とした楽曲を作るイエスパーが後ろで見守っているだけあって、「ちょっと(体重じゃないところを)重くしたHEART」って感じで、良く言えば安心して、悪く言えば退屈に聴ける出来。楽曲も短めで、いかにも日本で売れそうな音、という印象です。
でもNIGHTWISHWITHIN TEMPTATIONみたいに変に完成してしまっていない分、これからヴォーカルが変化していけばセールス的には化けるかもね。難点があるとしたら、二人の声質がかなり似ていることで、この方向で作っていくなら、次のシングルでは男性デス声ゲストヴォーカルの一人も欲しいところです。"Just A Friend"なんか、アレンジをもう一捻りすればかなり好きになれそうな曲ではある。


雰囲気をつかんで貰うために、デビューEPのタイトルトラックでもあり、アルバムにも収録されている曲を。
Wasting Life / All Ends