MacBook AirとiTunes Movie RentalsとCulture First


以前から噂のあったMacBook Airが発表になりました。Appleのサイトではもう予約できます。お届けまで2-3週。


確かに薄さ1.94cmはノートPCのサイズとしてはインパクト充分ですし、ノートPC史上最も洗練されたデザインを実現していると思いますので、僕も含めたMacユーザーなら食指が動く所なんですが、地味に気になるのが重量。1.36kg。これ、もうちょっと軽くならなかったのかね。アメリカ人には軽々持てる重量なのか。日本だと1kg前後の軽量ノートPCはWindowsに割とザクザクあるので、これだけ薄さを強調して「実は持ってみたら1.36kg」ってのは結構期待ハズレな感じが否めません。アップルの素敵な宣伝戦略に乗せられて「まるで本物のノートみたいだ!」と興奮して買うと意外と重くて足下を掬われそうなので、新しいものに弱い人は注意。


別に薄さだけで言ったら僕が今仕事で外出時に使ってるMacBookだって2.75cmなんですよ。この1cmの差は正直然程携帯時には気になりません。サラリーマンの鞄に入れるノートPCとしては許容範囲というか、充分薄い部類だと思う。問題は13インチのMacBookが2.27kgもあるってことで。むしろ薄さより重量がネックだと思ってたんですが。違うのかな。WindowsユーザーをMacに呼び込む起爆剤としては今ひとつか。まあ、Macユーザーの一定数が「他人とは違うものを使っている優越感」を拠り所にしていると思うので、そういった人たちには逆に安心感を覚えるニュースかも知れません。


個人的には職業柄、MacBook Airよりもこのニュースが気になりました。


Apple TVが、無償アップグレードで映画レンタルに対応

このアップグレードにより、米国のiTunes Storeで始まる映画レンタルサービス「iTunes Movie Rentals」に対応する。(中略)Apple TVユーザーは、PCやMaciTunes画面からでなく、テレビに接続されたApple TVのメニューから1000タイトル以上の映画から見たいものを選び、レンタルすることができる。(中略)Apple TVには、オンライン写真サービスのFlickr.Macのフォトギャラリーに保存してある写真をスライドショウにする機能が追加されている。(中略)また、楽曲やポッドキャストは、従来ではPCおよびMac側のiTunesで購入・購読し、転送を設定する必要があったが、今回のアップグレードで、Apple TVから直接購入・購読が可能になった。


気になるレンタル価格は1本2.99ドルからで、主要映画を網羅している、とのこと。


日本がBSデジタルだコピーガードだダビング10著作権法改正だとバカなことを言ってる間に、アメリカは随分遠い国になってしまいました。リビングのAppleTVで好きな映画をレンタルして好きな時に見る(見終わると勝手に消える)、iTunesで購入した曲を聴きながらお気に入りの写真をスライドショーで眺める、それをiPodにも持ち出せる文化的生活。一方で別に音楽を聴くためだけに買ったわけじゃないのにPCもiPodも「文化を守る」という訳のわからん理由で課金されて、割高で購入したマシンと割高で購入した楽曲に囲まれているのに、その曲をコピーして街へ持ち出す事もできない分化的生活。一体Culture Firstなのはどっちか、という話です。


「文化が経済至上主義の犠牲になっている」んだってさ。笑かしやがる。売れないCDやDVDを次々と廃盤にして、クリエイターへの分配を削り、新たなクリエイターの製作意欲を削ぐ規制ばかりクリエイトしてきた人間におんぶにだっこでやってきた者が言う台詞か。もちろん権利ビジネスの世界がユーザー視点のみの綺麗事で成立しえないのは百も承知だけど、著作者が権利者の言いなりになって「はじめに文化ありき」なんて寝言で課金精度ぶちあげちゃダメだろ。とりあえず。廃盤を認めている、という事象だけで論理が破綻するし。あれか、全著作者は「廃盤」=商業的にだけでなく文化的にも無価値な創作物であった、という前提に同意してる、ということなのか。このままじゃ、あんたらのせいで「文化」って言葉が「スイーツ(笑)」みたいな嘲笑の対象ワードに落ちちゃうじゃん。


消費者(非著作者)はコピーガード議論の時に一度「著作者と権利者は別物である」、つまり音楽を作っている人と音楽を売っている人は別物であるという当たり前の事実に気付いた筈なのに、こうやって著作者がいつまでも権利者(レコード会社/出版社/放送局など)の言いなりになってると、本来共闘できるはずの著作者と非著作者の距離がどんどん開いて、著作者と権利者の見極めが付かなくなった消費者に軒並みそっぽを向かれてしまう気がする。現状は「著作者とは文化をクリエイトして我々の生活を豊かにしてくれる人ではなく、HDからカーナビからiPodまで全てのものに団体を組んで課金しては我々の財布を貧しくする敵」という認識の一歩手前まで来てる。本当にそれで良いの。伝統芸能が衰退するのは、観客と芸能継承者の距離が離れた時ですよ。「俺には関係ない、黴の生えたエンターテイメント」と思われた時、どんなに歴史のある伝統芸能だって終わってしまう。自分たちで観客との距離を離してどうする気だ。


はてなダイアリーでは申し遅れましたが、僕は映像制作を生業としている者です。クリエイターではなく、経営者側ですので、自分で素晴らしい映像を生み出すことはできませんが、自社のクリエイターに最大限の報酬を支払えるよう、会社が生み出した映像で一人でも多くの閲覧者に喜びを覚えてもらえるよう、日々自らの未熟さを責めながら努力しているつもりの者です。
これまで余り専門的なことを書いても面白みも無いし、巷で話題になる違法ダウンロードや音楽業界の話も一歩引いて直接突っ込んだ話はここでは避けてきましたが、なんか緩やかに自殺するような最近の趨勢には余りにも腹が立ったので、今後そういったエントリも少し増やしていこうと思います。恥ずかしい社内事情なども明かしながら。著作者と権利者を誠実に分けることで利益を生み出して皆でハッピーになろうと毎日頑張っている人間にとって、こういった著作者と権利者がねじれたスクラムを組んで関係のないところから銭をかすめ取ろうという動きは、ちょっと許せないよ。



著作権法

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「どこまでOK?」迷ったときのネット著作権ハンドブック

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