God This Hurts / Betty Curse

EVANESCENCEのブレイクが教えてくれたもの、それは「エッセンスとしてのゴスは売れる」という単純な事実でした。
ヒット曲"Bring Me To Life"はゲストに男性ボーカルを迎え、彼を男性リスナーと同化させることで「ゴス女のいる風景」を魅力的に提示してみせる。アメリカのメインストリーム・ロックに、文字通りゴスのある生活が持ち込まれた瞬間です。


僕はあのヒットを見て「こりゃあゴス・ポップが来るでぇ!」と興奮したものですが、その後どうもマーケットとしては次の決定打が出ず、低迷しているようで。どうも売り手側がエッセンスとしてのゴスと音楽としてのゴスを上手く消化・分類出来ていないんじゃないかという気がします。日本じゃ未だにFLYLEAF【 asin:B000GG4ZWM 】あたりのバンドに「EVANESCENCEふう」という見当違いなポップが付く始末。ロック・バンドに女ボーカルが居て素っ頓狂な声出してりゃ売れるってもんじゃねえんだよ。もっと薄味でいいのに。味付け濃くしてどうする。EVANESCENCEが醤油味ならFLYLEAFなんて味噌バターじゃん。わかってない、全然わかってない。


と思っていたら、UKからまさに僕の望むゴス・ポップを体現したようなバンドが出てきました。
まずは御託を並べる前にこのPVを見ていただきましょう。かわいいよ。


God This Hurts / Betty Curse


どうよ、この薄味感。
見た目がゴスっぽいというだけで、音楽はただひたすらにポップ。音だけ聴けばAvril Lavigneの新曲だと言われても納得できるでしょ。ゴスでもゴシック・ロックでもなく、ただ其処にエッセンスとしてだけゴスが存在するポップス。Goth-Popです。ここでの「ゴス」は音楽用語ではなくファッション用語であることに注意。音楽にはゴスの要素など微塵もありません。EVANESCENCEの時には控えめに「これってゴスじゃなくね?」と抗議していた人たちも、ここまで来るともう何を言う気も失せるはず。


年に似合わずCUREとか好きな女の子がちょっと背伸びして痛み系の歌詞を書いて、それを一流のスタッフが寄ってたかってポップにまとめました、というコンパクトで完成度の高いパッケージ商品。衣装がゴスっぽくてちょっと痛い子かも知れないけど、でも半端なく可愛いな、どうしよう、好きになっちゃうかも。みたいな。男はこうゆう「ちょっと危ないニオイのする女の子」に弱いですから。そんな男の気を引くアイテムとして、完璧なまでにゴス・エッセンスを使い切ったこの仕掛けは見事というしかありません。多分今UKの男の子はベティちゃんの後ろでギターを弾く夢ばかり見てるんじゃないでしょうか。或いは昔バンドを脱退したベーシストとベティちゃんを取り合う夢とか。


要するに、これは実写版NANAですよ。ちょっと男性寄りの。
或いはヴィジュアル性を高めたTommy Heavenly6


ちなみにボーカルのBetty Curse(20歳!)ちゃん、本当はMegan Burnsといって、ダニー・ボイル監督の映画などにも出演経験のある、れっきとした女優さんです。うーん、作りこまれてるなあ。そりゃあ可愛いはずだ。シングル"Excuse All The Blood"にはSteve Ludwinのクレジットがあるし、なんとアルバム『Her Lies』にあたってはメインソングライターが元The VaselinesのEugene Kellyですよ。


NIRVANAが好きな人なら知らないとは言わせない、あのカート・コバーンが最もリスペクトしたバンド、The Vaselines【 asin:B0000035F7 】。この辺りもグランジ好きの中年に片足を突っ込みかけたロック退役軍人たちの心を擽るじゃない?そう、音だけ聴けばギターは轟音だけど曲調自体はポップだし、先ほどからゴス・ポップ、ゴス・ポップと連発してきましたけど、実際問題これってグランジど真ん中なんですよね。Bettyちゃんの声はシャーリー・マンソン似だし。


俺の青春はグランジだった。カート・コバーンが俺の教科書だ。
そうやって大上段に振りかぶってしまった以上、今更かわいい子が歌うポップな音楽なんて何か理由が無いと聴けないんだ。ロック硬派を気取るために唯一「カート・コバーンの嫁だから」と言い訳してHoleを聴きながら思う。これで歌ってる子がかわいければなあ。


そんな窮屈なロック・インテリさんに向けたど真ん中ストライク、Betty Curse。
ほら、これはゴスっぽくて少し面白いだろ?The VaselinesのEugene Kellyが曲書いてるんだもん、聴かなきゃね?


言い訳しながら萌えると良いよ。ここには90年代のHOLEやGARBAGEに無かった萌えの全てがある。
まだMaxi Singleも1st Albumも日本未発売ですが、今年はゴス・ポップが来るぜ。
それまでPVを見ながらせいぜい悶えてなさい。


God This Hurts [Single] [Maxi]

God This Hurts

God This Hurts

Girl with Yellow Hair [Single] [Maxi]
Girl With Yellow Hair

Girl With Yellow Hair


Excuse All The Blood / Betty Curse (YouTube)
http://www.youtube.com/watch?v=wSx2dbkHmD4


Girl with Yellow Hair / Betty Curse (YouTube)
http://www.youtube.com/watch?v=ruM4ZcJi12U