iPod touch買いました

Apple iPod touch 16GB MA627J/A

Apple iPod touch 16GB MA627J/A

当分日本でiPhoneは発売されそうにないし、発売されても何か根本的なところが骨抜きにされる気配が濃厚なので、とりあえず待ちきれずiPod touchを買いました。16GB。詰め込める容量だけを考えたら従来のiPodより相当な割高感がありますが、仕事もプライベートもMac使ってるし、仕事が映像関係なので何かとプレゼンなんかでも使えるんじゃないか、と言い訳をつけて購入。恐らく来年初頭には無線LANサービスも少し格安なものが出て、iPod touchユーザーに合わせてくるんじゃないかと期待しつつ。現状は余り意味のない「YouTube」「Safari」「iTunes」といった機能以外を一通り使ってみました。一応60GBのiPodも持ってたけど、これまで専ら音楽用には旧世代のnanoを使っていたので、WEBアプリやらをポンポン放り込めてiPhotoと同期してくれる時点で結構驚いたりして。それって別にiPod touch独自の機能でも無いような。


従来のiPodからiPod touchでの如実な変化と云えば、まずは(映像や写真を見る時には当然としても)音楽を聴くだけでもポケットからiPodを取り出す瞬間が多い、ということです。買う前に誰もが魅了されるのは、あの画面を直接触って操作できるインターフェースだと思うんだけど、これは意外とダルい。従来のiPodではボタンの位置が決まっているので、ポケットに入れたまま音量の調整から電源のON / OFFまで直感的に操作できたし、ある程度自分のiPodに入っているプレイリストを把握していれば、それこそポケットに入れたままで数1000曲の中から好みの楽曲をサーチしてピンポイントで聴くことも可能でしたが、「直感的に操作できるタッチパネル型のインターフェース」が売りのiPod touchは、実は「全ての操作が画面を見ながらしか不可能」なので、音量調整から次の曲へ行く動作ひとつにしても、いちいちポケットや鞄から本体を取り出さなくてはなりません。通勤など主に移動中iPodユーザーとしては、これは割と面倒臭かったり。盲点でした。


しかし、一方でこの動作を繰り返すことで、iPod touchの意図というか、特性みたいなものが見えてきます。


とにかく音量をあげるにも、曲を選ぶにも、薄型大画面と向き合う必要があって、その度にディスプレイには自分が聴こうとしているor今聴いているアルバムのアートワークが登場する。音量調整や早送りなども、従来ホイールをくるくる回してポケットの中で密室操作でしたが、画面上で実際にタッチすることで、とにかく音楽を目で感じることができます。CMなどでお馴染みの「アルバムをめくるように曲が選べる」画面はその象徴ですよね。ジャンルやアーティストではなく、絵面で音楽を選ぶ体験。これは毎日操作する分には確かに上述の通り、若干面倒ですが、それを繰り返すことでなかなか面白い発想の転換がユーザーに生まれるんじゃないかと思いました。


なんか、まだ買ったばかりでまとまってないけど、iPod普及以来、僕も含めて多くの人たちが、手軽に持ち歩けて直感的に操作できるという点を重視して、CDを重厚なコンポで聴く場合と比べたら非常に残念な音質で音楽を聴く行為を「新しい音楽体験」として重宝してきたわけですよね。プレイリストやシャッフル機能が充実するにしたがって、僕たちは「飛ばして再生される」ことを前提とした楽曲群を大量に持ち歩くことに価値を見出して、一方で個々のパッケージとしての音楽に対する価値はどんどん下がって行った。デジタルでのダウンロードから派生した著作権問題は勿論時代の趨勢として当然の議論ではあるけれど、ハード側ではなくユーザー側にも「シャッフル候補の曲にそんな高い金払ってられねえよ」「コピーする為にある商品がコピーはダメとか寝ぼけたこと言ってんじゃねえよ」っていう、実はすごいパラダイムシフトが起こってるわけで。元々「今月のお小遣いだとあと何枚アルバムが買える」「こんなに買っても聴かないし」という物差しで測ってたものが、「まだハードディスクの空き容量が何GBある」に変われば、そりゃあ拠出しても良いと思うコストも作り手に対する経緯も下がって当たり前です。


一昔前はレコード盤なんか買ったら結構大荷物で、割れ物だし、その後の行動が制約を受ける商品だったのに。クリックひとつで買えて、クリックひとつで再生できて、クリックひとつでスキップできて、クリックひとつで削除できる。価格はさておき、手に入った実感が薄い商品。いつの間にか音楽はそんな軽いブックマークみたいな存在に成り下がってしまった。
でも、だからこそ、ポケットから出す余分なひと手間、画面を見るひと手間、クリックの代わりにタッチしてドラッグするその1秒だけでも、音楽と向き合ってちゃんとジャケット見て貰える機会が増える仕組みって大事じゃねえかと。逆に言えば、音楽という存在じゃなく商品レベルで見れば、そこまで比重の軽い商品に現在の音楽は成り下がってるように思います。


うーん、やっぱ上手くまとまりそうにないので、この話は改めて。いずれにせよ、ここまでPCと携帯音楽プレーヤーが普及しちゃったらCDなんて直接小売りの形としては早晩崩壊すると思うし、今のうちに、せめてアルバムジャケットという概念をユーザーが忘れてしまわないうちに、デジタルダウンロード販売時にジャケットが選べるとか、楽曲購入者にiPod touch壁紙サイズの画像を配布(スキンみたいなやつ)とか、そうゆう有効活用してみて欲しいですけどね。


関係ないけど、多分このままデジタルダウンロードが主流になっていくと、音楽業界が利益を確保する唯一の方法ってネットワークビジネス的な販売形態じゃねえかと思ったりします。これだけWEBが発達して自分の好きな音楽や映画を他人に紹介して広める媒体があるのに、入ってくるのは雀の涙みたいな一律アフィリエイトだけ、ってモチベーション上がりにくいじゃん。余程のアルファブロガーなら兎も角、アフィリエイト収入欲しさにブログ立ち上げる人と真摯に音楽を紹介しようって人は別ジャンルだろうし。でもコピー制限はナンセンスで自らの首を絞める。となったら、「どんどん紹介してください。コピーもダウンロードも有料。でもあなたがP to Pで広めた人はシステムで追跡可能なので、あなたが買った音楽が売れるとバックマージンが入る可能性があります。ひょっとすると購入金額以上のバックマージンが入る夢の音楽生活も!」みたいな煽りしか、有償ダウンロードを納得させて違法コピーを防ぐ手段って無いような気がしたり。まあ、冗談です。でもこの冗談以上に現実味が無いことを今もやろうと悪あがきしてる人がすごく多いような気がしてならない。