京都の雑煮

あけましておめでとうございます。


年末年始は実家でのんびり過ごしました。
今は両親も横浜に住んでいますが、僕は実家が京都なので、正月といえばやはり白味噌の雑煮です。これが無いと一年はじまった気がしない。最近は都内でも、比較的簡単に白味噌が手に入るので、随分と手軽に京都の正月気分が味わえるようになりました。とはいえ、ただ白いだけで甘味のない白味噌も売っているので購入の際は要注意。個人的には、やはり石野の白味噌がベストです。「雑煮が甘いなんて」と思う向きには薦めませんけど、甘いものが好きな女性で、白味噌を食べたことがないという方は、ぜひ一度試してみてください。


京都の白味噌雑煮は、丸餅・大根・頭芋などを入れるのが一般的です。頭芋はサトイモ科の八つ頭という芋のことで、そもそも餅(米)が高くて買えない庶民が代用品として雑煮に入れたのが由来というだけあって、非常にモチモチとした食感の芋です。今では頭芋を入れる風習だけが残って、餅と頭芋がダブルで入る上にこってりとした白味噌風味ということで、京都の雑煮はかなりのボリューム。「京都=薄味」という先入観で食べると、予想を大きく裏切られるはず。僕はなんとなく習慣で食べてましたけど、和食で朝からこんなにこってりしたものを食べる瞬間はなかなかありません。


大阪あたりではこのこってり感を嫌ってか、正月は白味噌とすまし汁の雑煮を交互に食べるようです。あと、大阪の白味噌雑煮は焼き豆腐が入っているケースも多いですね。奈良は雑煮の餅にきな粉をつけて食べるらしいですが、これは実際に食べたことが無いので、奈良でどの程度ポピュラーなのかは良くわかりません。


僕はやはり白味噌雑煮には焼き豆腐など入れず、焼かない丸餅と頭芋と大根(たまに金時人参)あたりをだしを取らずにじっくり水で煮込み、最後にこってりと白味噌を入れ、仕上げに鰹節を添えて食べたいです。コテコテの白味噌、ドロドロに溶けた丸餅と頭芋。椀の中すべてが白一色で、どこまでが餅でどこまでが汁なのかもわからない。そんなカオスな雑煮に箸をさして具を探りながら、「今年もまたゼロから暗中模索でがんばるよ」と天地創造気分を味わう正月も悪くないものです。


雑煮で使い切れずに余った白味噌は柚子の季節に柚子味噌、蕗の季節に蕗味噌など作ると美味しくいただけます。筍に蕗味噌とか。美味いよ。それでは、昨年末にはじめたばかりの『舟中の指、掬すべし』ですが、今年もどうぞよろしく。


dancyu (ダンチュウ) 2007年 02月号 [雑誌]

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