金色の衣を纏い油にナントカ

横浜に住む両親から「庭に今年も蕗の薹が生えてきた。食べごろだ」と電話があったので、天ぷらを食べに帰る。蕗の薹、などと漢字で書くと高尚な食べ物のようだが、「ふきのとう」である。


独特のほろ苦さがあるので、苦手な人は苦手かも知れないが、あの春を息吹をそのまま食べているような味わいはたまらない。揚げると苦みは減るが、それでも気になる人は事前に水に少し重曹を入れて茹で、更に数時間水に浸しておくと苦みが抜けるはず。まあ、スーパーなどで市販されているものは苦みが少ないものも多いので、それほど気にならないかもしれない。先日ASOで食事したら蕗の薹を使ったパスタが出てきたが、なんの苦みもなく、蕗の薹はただ飾りとして其処に在るだけ、という料理。雪の中から顔を出す蕗の薹をイメージして非常に美しく作られていただけに、少し勿体ないと感じた。


庭でとれる蕗の薹はかなりほろ苦く、僕のようにこの風味を好む人間には毎年春を感じさせてくれる素敵な贈り物になっている。衣を付けすぎるとせっかくの味わいが消えてしまうので、薄く衣を付けて、天ぷらにする。


余った蕗の薹は刻んで炒め、味噌と味醂に好みで砂糖を加え、蕗の薹味噌に。白飯やふろふき大根に乗せても美味いが、筍の季節まで取っておいて茹でた筍にのせたりすると春の味覚を一人占めしているような気分が味わえてたまらない。蕗の緑がより色鮮やかに映えるよう、味噌は白味噌を使うのがお薦め。白味噌なら甘いので、砂糖は必要ない。


料理の醍醐味はやはり、こうして季節の移り変わりを感じ取れることにあるように思う。旬の食材を食べ、豊かな四季を感じながら、明日への活力を見出す。最近忙しくて外食が増えがちではあるが、季節を忘れるような生活だけには堕したくない、と強く思った休日だった。親父、ほろ苦い忠告をありがとう。